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ゲーテ「若きウェルテルの悩み」

主人公の名前はウェルテルが友人ウィルヘルムに送った手紙から成り立っている小説です.「親友のいいなずけロッテに対するウェルテルのひたむきな愛とその破局を描いています。若きゲーテが味わった青春の情感と陶酔,不安と絶望があります。「ああぼくの知ることは、だれでも知り得るのだ。――ぼくの心(ハート)はぼくだけが持っている」次のようなゲーテの体験を小説にしました。


 「仕事に身が入らないゲーテは、ある夜、舞踏会で美しいシャルロッテ(愛称ロッテ)と知り合い、相思の仲となった。貧しい地方役人の娘であるシャルロッテは、亡き母に代わって幼い兄弟の面倒を見る明るく聡明な娘だった。ゲーテの上司である裕福な参事官ケストナーも、シャルロッテに惹かれ、結婚を申し込んだ。その求婚を受け入れるシャルロッテ。それは実は、ゲーテを愛するが故の悲しい選択だったのだが、ゲーテには事情を理解する術がなかった。同じ頃、ゲーテの友人イェルーザレムが人妻との恋に破れ、自殺した。自身の苦しい恋愛と友人の死に触発されたゲーテは、一気に名著『若きウェルテルの悩み』を書き上げ、文豪としての一歩を踏み出すのだった。」

「ねえウィルヘルム、ぼくはいろんなことを考えてみたんだ、

自分を拡げ、新しい発見をし、遠くをさまよう人間の 欲求だとか、それからまた、進んで自分を制限し、 右顧左眄せずに昔からの人の通いなれたみちを進んで 行こうとする内心の衝動だとかを。

 不思議だ、ぼくがここへやってきて、丘から美しい谷をながめ、 ぼくをめぐるあたりの景色をめでて――あすこには小さな 森がある――あの美しい森の木陰に入りこめたらなあと思い―― あすこには山の頂がある――あすこに立って広々とした地方を 見渡せたらなあと考え――打ちつらなる丘とやさしい谷間――
ああ、あの中に自分をまぎれこませたらなら。――ぼくは 急いで行ってみる。そうして帰ってくる。望んだものは 見つかりはしなかったんだ。未来というものも、遠方と 何の変りがあるだろう。大きな漂うような全体的なものが ぼくらの魂の前に横たわっていて、ぼくらの感情はぼくらの 眼と同じようにその中にのみこまれてしまう。本当にぼくたちは ぼくたちの全存在をささげて、たった一つの大きな壮麗な 情感のいっさいの歓喜をもってぼくら自身を満たそうと あこがれるだ。――ところが、ところが、急いで行ってみれば 彼岸が此岸になってしまえば、すべてはもとどおりなんだ。 ぼくらは相変らず貧相で狭く、逃げ去った幸を求めて 魂はむなしく息を切らしているのだ。 」


「ゲーテはそんな青年の世間知らずや常識知らず、純粋さや無垢さと云う宗教的情熱の如きものの裏側に隠された利己心や自尊心の冷酷さなども重々承知の上で、自分だけは見捨てないよ!と、暖かい眼差しを伝えているのである。」

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