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風通しをよくする

 最近、個室になっている二つの部屋の壁を取り壊して、共同部屋に移行しましたが、小さな組織でそもそも会話ができないのも問題です。対話しようとしない人間同士を同じ部屋にしても、心の壁をなくさないと、なかなか改善されない気もします。大きな組織ではもちろん、大部屋が望ましいと思います。

 フィナンシャル・タイムズ紙アメリカ版編集長のジリアン・テットさんが書いた『サイロ・エフェクト』で、大企業などの組織で働く人々が、”タコツボ”にはまって、風通しが悪くなる理由について述べています。

 出井氏はカンパニー制にして、タコツボ化に拍車をかけてしまった。役員会は各カンパニーの利害調整の場になり、全員の合意がないと何も決まらず、政治力の強い役員のわがままが通る。

 ソニーの元社長ストリンガーが発言していました。「サイロの壁を壊そうとしてきましたが、日本の社内にはまだまだサイロが残っています」サイロとは農業用貯蔵庫のことだが、日本風に言えば、縦割りのたこつぼ型組織と言えるだろう。そんなたこつぼが日本のソニーの至るところに残っている、と批判した。

 「ソニーはアナログのスタンドアローンの製品で成功してきましたが、もうそれでは成功できません。ネットワークでつながる時代です」「管理職の数が多すぎます。製品づくりではなく、報告書づくりが仕事になっています。官僚機構がはびこっており、もっと単純化することが必要です」「若い人に活躍の場を与えないといけません。いまは若い人が(重要な地位に就くのを)あまりに待ちすぎています」

 ソニーの例では、部門の壁があって、昔のように新製品が生まれなくなった。多くの人が自分の専門分野に固執してしまう。ビジネスでも何でも視野狭窄になってしまう人が多い。盛田さんのころは、敢えてリスクを受けて立ち、カテゴリーにとらわれず、その垣根を越えようとしていましたが、それが出井さんのころはなくなった。

 ジリアン・テットさんは、組織の壁をなくすると、対話が進むことを述べていました。別々の部屋だと、社員同士の対話があまり行われない。偶然に誰かと話してアイデアをもらうことが、非常に少なくなるのです。マイクロソフト本社は、かつて個室レイアウトでした。今では、その壁を壊してコラボレーションスペースを広げています。
 
 丸山真男が「日本の思想」の中で「ササラ型とタコツボ型」で、日本文化はタコツボ型であると述べていました。

 タコツボ社会の最大の特徴は、「となりは何をする人ぞ」と言った具合に、隣近所を理解しないことであるから、自分が社会の中で占めている位置というものを正確に把握できない。

 ”ササラ型というのは、ササラのように同じ根っこから様々な枝葉が分かれるタイプの文化である。そうした文化では、根っこが共通だから枝葉同志の対話が成り立つ。ところがタコツボ型の文化では、学問芸術から社会組織のあり方まであらゆるものがタコツボのように孤立して存在し、相互の関わり合いがない。したがって対話が成立しない。”

 ジリアン・テットさんの『サイロ・エフェクト』よりも前に、タコツボ型社会の問題はあったようですが、時宜を得た内容で、壁をなくすことの大切を教えてくれます。



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