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医師が書いた潜在能力発揮法

『自分の潜在能力を発揮させる技術』(梶浦真美/訳、アチーブメント出版/刊)

 マリオ・アロンソ・ブッチ   ハーバード大学メディカルスクールの特別研究員
 ニューヨーク科学アカデミーメンバー。消化器系をはじめとする執刀医として25年以上のキャリアをもつ。コミュニケーションと人間関係の人体に及ぼすメリットについての研究等で受賞歴がある。ストレスが消化器系に与える悪影響についての研究から、脳の機能性に関する研究へとフィールドを広げる。マリオ・アロンソ・ブッチ氏は、しなる力 という本も書いています。

 マリオ・アロンソ・ブッチ氏は脳をフル活用し、潜在能力を引き出して、困難を乗り越えていける力を身につける方法を示している。消火器系医師らしく感情がどのように脳やからだに働きかけるかをわかりやすくきちんと書いています。古い既知のことでも、記述に新鮮さが感じされます。洗脳のように、一時的に気分をハイにして、自分に都合の良いことを引き寄せることを推奨するような本に比べて、良心的です。自己犠牲、利他主義、気づきと溢れる優しさ、分かち合いの精神を欠いた、ポジティブな考え方は禁物です。

 心には、知識、経験が詰まっているので、素直な心になることは難しいようです。心には、暗闇のような世界もありますし、不愉快な出来事に触発されて抑えがたい感情を爆発させることがあります。いらいらする原因は、過去の記憶との結びつきにあります。心がひりひりするような胸の痛み、過去の苦々しい記憶は忘れ難いものです。日々に出会うことを、どのようにとらえるか、過去の膨大な知識、経験に照らして、判断していますが、潜在意識だけでなく、顕在意識も関わっています。心には、いろんな感情の部屋があります。つらい時代を生きた人にとって、不安、憎しみ、怒りの部屋にある感情も眠っています。自分に嫌なことをした人とかかわっても、苛立ちを少なく、冷静に対応するためにも、心の働きを知ることは大切です。相手を許すことは、自分を過去の苦しみ部屋から一歩出て、解放するきっかけになります。

 生きるうえで、いろんな問いかけをします。現状を見てなぜこうなのか、問い発します。それを心の中で答えを探します。グーグルの検索のように、今、目の前で起きている事象で検索すると、過去の膨大な知識、経験を呼び起こす、リンクに重み付けがあって、人それぞれの答えの候補が浮かびあがってきます。上機嫌の人、不機嫌の人、あら捜しの好きな人、意外に、問いの発し方、重み付けに大きな違いがあります。心の中に答えがありますが、問いの発し方が、積極的で明るい未来の答えを得ることができます。灰色の記憶に眠る出来事から不必要な影響を排除し、過去から解放されて、新しいイメージで一歩踏み出して生き生きと生きていけます。心の闇に光を当てると、人生の可能性を見出せます。


 
第1章新しい自分になるために
第2章自分の内側を見つめる
第3章ひとつの脳には2つの心がある
第4章宝の発見
第5章価値のある自画像を描こう
第6章最高の遺産
第7章崖から飛び降りる
第8章認識の扉
第9章問い――薬にもなり毒にもなるもの
第10章言葉は現実を創る
第11章勝利を願おう。そして勝利者になろう
第12章人生の栄養素
第13章細胞の心
第14章自分を許すことを学ぼう
第15章2つの教訓
第16章暗闇から光へ
第17章本当の自分に戻ろう
第18章魂の暗夜
第19章新しい世界

自分で自分を決めつけている
 私たちは自分のアイデンティティを持っている。しかし、いつの間にか、「君は〜である」という言葉に縛られてしまい、時には自分が作り上げたイメージを変えようとする状況や人物に遭遇したとき、子どものように抵抗を示してしまう。それが、自分であると決めつけてしまっているのだ。しかし、可能性は、自分で作った自分のイメージの外側にある。自分のアイデンティティに固執している限り、自分の隠された能力を見つけ出すことはできない。新しい視点を手に入れたとき、自分の殻を破ることができるのだ。

新たな人との交流を避けようとする
 自分の慣れ親しんだ場所にいるのは、落ち着くだろう。しかし、時にそれは新しい発見や成長の可能性を閉ざしてしまうこともある。
 私たちは日々の生活の中で「こうあるべき」「こうでなければならない」という価値観に捉われてしまう。新たな人とのちょっとした出会いが大きな刺激となり、自分が破れないと思い込んでいた殻を破るための力を与えてくれることがある。慣れ親しんだ場所を離れ、新たな人と交流してみよう。自分の本当の能力に気付き、フルに生かせる場所が見つかるかも知れない。

新しい自分にであうために
 人生で出会う問題のほとんどは、難しいから解決できないのではなく、直面した瞬間に無意識に感じる「自分には無理だ」という感情が解決を阻む。問題が生じても心の平衡感覚を失うことなくに最善の対応をして、効果的な対策を出来る力、が重要なのだ。
 心のソフトウェアは「自分の経験の積み重ね」から出来ている。中には、自分たちを抑圧し、状況の変化に適応する力を奪う経験もある。そのような経験を心のソフトウェアから取り除くことが出来れば脳が変わる。成人の脳には、外部からの影響に適応して変化する可塑性があり、考え方が変われば神経回路も変化する。

ひとつの脳には二つの心がある
ー人間の脳は物理的に右脳と左脳に別れているだけでなく、二つの心があって、それぞれが現実を異なった方法で処理し、互いに補完しあっている。新しい不慣れな環境に対処する時には右脳が重要な役割を果たす。実際に、先の見えにくい状況に遭遇した時には、右脳の動きが活発化することがわかっている。それに左脳は言語を使って伝達するが、右脳は身体の感覚、画像、記号、感情を使う。ここでの問題は、私たちは志向に対しては注意を向けるが、自分の感じたことや直感に関しては注意を向けないこと。自分が自分のことを規定しているアイデンティティは左脳を通して形成された者が圧倒的に多い。そして、自分たちに課している限界、つまり現実を見るときのフィルターもまた、左脳の役割なのだ。左脳の動きを時にストップさせる時間を作ることで新たな現実が見えてくる。

最高の遺産
 平和とは、ほかの絵に描かれている凪いだ海や青い空といった穏やかな世界からえら得る者ではない。どんな過酷な状況にあったとしても自分の大切なことに集中し続ける力から生まれるものなのだ。集中力はそれを向ける場所にって平和の源にもなれば、不穏の種にもなる。

問い 薬にもなるときにもなるもの。
 注意を向ける先をコントロールする能力は、きわめて大切である。そのための実践的な方法としては、2つの方法がある。1つは、全ての注意を今その瞬間にやっていることに向けることである、そしてもう1つの方法が「問いを発する」という方法である。

勝利を願おう、そして勝利者になろう

 姿勢や身体の動かし方も、実は感情や心理に大きな影響を与える。脳が全てをコントロールしていると思いがちであるが、姿勢をかえることで感じ方や認識が変わる。
 
 アレクサンダーテニックは、心の状態を変化させるステップを示している。  

ステップ1: 「無自覚の機能障害」を「自覚している機能障害」に変える(認知)  
ステップ2: 「自覚している機能障害」を「自覚している機能」に変える(新たな習慣の始まり)  
ステップ3: 「自覚している機能」を「無自覚の機能」にする。(習慣の身体化)

 

崖から飛び降る
 多くの神秘主義者は神と一体化する過程で、混乱、悲しみ、恐怖、孤独と言った「魂の前夜」を体験するという。偽りのアイデンティティを捨てたいと思った時に、たいていこのような思いにとらわれる。この状態になると、ぼーっとして思考力が低下し、霧がかかったようにどうしていいかわからなくなる。偽りのアイデンティティは、言葉や志向を使って攻撃をしかけ、探検をあきらめよう、元の場所に帰ろうとそそのかす。でも、実はこの状態は「今が踏ん張り時」というメッセージなのである。

 人は「もうここまでだ」、「これで終わりだ」、「こんなことはこれ以上続けられない」という境地に達しないと、勇気を出して道の世界に飛び移ろうなどとはなかなか考えないものだ。それでも、ちょっとしたことや人との出会いから刺激を受けて破れないと思っていた殻を破り、新しい自分になって羽ばたくケースがある。

魂の暗夜
 暗い夜がつらいのは、やんでいるからではない。「自分には確固たるアイデンティティ」があるという深淵が崩れ、感情がそれを感じ取ってなんらかの反応を起こしている為だ。芋虫が蛹になり、酵素によって分解されて蝶になるように、私たちも新しい自分になるには分解の過程が必要なのである。このとき、なんとかしようとしてあがかないこと。逆に、心を開いて、自分の感情をしっかりと受け入れなくてはならない。
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